躍女とおしゃべり2

2021.08.25

人気の観光エリアで働く女性の声を聞く2日間。第2日目の会場は白樺湖畔です。昨日とは打って変わって、高原ならではひんやりとした空気の中でのスタートとなりました。今日はどんなお話が聞けるでしょうか。

【参加者プロフィール】

疋田健さん(以下:健) 池の平ホテルの予約センター勤務。送迎バスの管理や運転をするなど、ホテルの業務全般を担う。夫婦で参加。

疋田涼子さん(以下:涼子) 長野県高森町出身。池の平ホテルの予約センターで夫と同じ職場で働く。保育園に通う男の子が一人。

田子直美さん(以下:田子)東京都出身。茅野市の地域おこし協力隊。「ちの観光まちづくり推進機構」で「ちの旅」などの本の発行や茅野市の観光を通じたまちづくりを関わる仕事に携わる。

村上千賀子さん(以下:村上)茨城県出身。女神湖でペンション「おやまのえんどう」を経営。小学校と保育園に通う子どもをもつ。

渡辺ゆかりさん(以下:渡辺)2015年に神奈川から移住。宿泊業の傍ら白樺高原の白樺林を保全する活動を主宰。3人の子どもをもつ。

横田夏紀さん(以下:横田)車山「プチペンションパオパオ」を家族で経営。関東出身。学生時代には海外在住の経歴もある。

井上智恵子さん(以下:井上)長野市出身。エクシブ蓼科のラウンジカフェに勤務。0歳、5歳、8歳の子どもがいて現在は産休中。今秋復帰予定。

数納幸さん(以下:数納)千葉県出身。エクシブ蓼科の和食レストランに時短制度を使って勤務。1歳と3歳と4歳と7歳、4人の子どもを育てている。

何年住んでも飽きない自然の中で仲間と

Q 地域の魅力とここで働いてよかったことをPRしてください

横田:地域の魅力は一言でいうと、「スイスっぽい」(笑)。車山は数年前まで毎年春に山焼きをしていました。なのであまり木が生えていないんです。点在する建物も洋風な建物が多いので、そんな景色をそう思います。

それに観光業ばかりなので人当たりのよい人ばかりです。特に宿を経営している人は、お客さんと接する時間も長いのでお話が好きな人が多いなと感じています。

渡辺:女神湖で宿泊業を営んでいますが、観光地なのに人が多すぎなくて静かなところが気に入っています。

よかったことは、「仲間と出会えた」ことです。6年前に引っ越してきたときは、周りに知っている人がいない中で仕事と初めての子育てをしていて孤独を感じていました。その後、山ん家を知ったり、子どもが保育園にいくようになったりして、お母さんたちとのつながりができたことが心の支えになっています。

数納:道を歩いたり運転したりしていて野生動物に会えるのが一番の驚きでした。ホテルにくるお客さんもそこを喜んでくれますね。この間ホテルの庭の苔むした岩の上でリスが駆け回っているのを見て「ああいいなあ」って思いました。

涼子: 白樺湖に住んでいますが、晴れているときの湖や山は魅力的です。「自然いっぱいで写真映え」します。そういう景色からは自然のパワーを感じられるんです。落ち着く環境の中、青、緑、黄色、白、自然の色がすごく感じられる。そういうパワーを感じられるのがいいと思います。

健:ここにくる前はサラリーマンで神奈川県にいましたが、空気のきれいさが全く違います。ずっと陸上をやっていて今でも趣味で走っているので、「毎日が高地トレーニング」だなって思います。涼しく人も少なくて、トレーニングが積めていい場所だと思っています。

村上:夏にクーラーがいらないのが一番の魅力です。

子どもも外で自由に遊べますし、一緒に山に行って採ってきたものを子どもと調理したり食べたりしています。子どもと住むなら田舎ののどかなところがいいなと思っていたので嬉しいです。

男社会の中で、子どもを産み育てる先駆者

Qここで働いてよかったことや大変なこと、また印象に残った人との出会いがあれば教えてください。

横田:満員電車と無縁というのがものすごくいいですね。東京・神奈川に住んで働いていたときには縁の切れないものでした。今は家での仕事なので通勤時間がゼロですけれど、買い物や子どもを保育園送るときとかでも渋滞がないと心の余裕が違います。

反面、家事・育児・仕事が同じ場所で同時進行しているのは大変です。職場が家庭であって子どもが寝るところ。こうしたところが一番ストレスです。

夫と夫の母にはとても助けられています。夫はもちろん、夫の母には本当に頭が上がりません。お願いずっと生きててねって思っています。(笑)

渡辺:「お客様に喜んでもらえる」「家族の時間が作れる」ところがいいと思っています。

でも大変なところも同じで「オンオフの区別がつけにくい」っていうところですね。お客さんが食事しているところから見えるところでうちの子どもたちもご飯を食べているとか、お客さんも嫌だろうなと思うんです。でもそんな気持ちを助けてくれるのも、お客様だったりします。子どもと遊んでくださったりするので、ありがたいです。

田子:地域おこし協力隊として茅野市にきて、いまは「ちの観光まちづくり推進機構」で働いています。役所っぽい組織だからか、構成メンバーに女性が少ないんです。そうすると若者や女性の声が届かないと感じることがあります。でも男性であっても同じところで苦労している人は助けてくれることもあるので悪いことばかりじゃありません。

井上:ホテル業は10年ほど前までは子育てしながら働くことへの理解があまりなかった男社会で、「産休をください」なんて言える雰囲気ではありませんでした。うちのホテルで産休をもらったのは私が初めてです。理解してもらうにはどうしたらいいか。不安を抱えながらやってきました。

 私が産休を取ろうか迷っているとき、「これからは女性が子どもを産んでまた仕事に復帰できる時代に変わっていかなきゃならないんだよ」と言ってくれた女性がいたんです。その人の後押しなかったら諦めていたかもしれません。

健:ホテルで働いているので、その中でいろんな仕事を経験できるところがいいですね。今朝はお子様連れのご家族がプリキュアの車に乗りたいということだったのでドライブしてきました。お子さんが喜んでくれるとこちらまでほんわかします。普段の生活を忘れて楽しんでもらうのに役立てて嬉しいです。

でも子どもが生まれてから子育てとの両立って、こんなに大変なことなのかと知りました。保育園の送迎とかはもちろん、時短勤務の女性は残業もできず時間通りに仕事を終えなきゃいけないというのが、大変なところだなと思います。うちも共働きですが、家にいる時間は奥さんの方が多いので、どうしても家事や育児については頼る部分が多くなってしまいます。

村上:ペンションを家族経営していますが日本全国から来てくれるお客様と出会えるのが嬉しいです。常連さんはおいしいものを送ってくれたり子どもの成長を一緒に喜んでくれたりするのはとてもしあわせですよ。

大変なことはみなさんと同じですが、仕事と子育ての両立です。家族だけでペンションを経営しているので、誰一人欠けても回らない。例えば子どもが熱を出したら本当は側で見ていてあげたいけれど、見ていてあげられないんです。病院も近くにないので、体調管理には気を遣っています。

涼子:住んでよかったことはいろいろな体験ができること。自分もそうですが、子どもにも体験させてあげられる、遊園地があったり、野生動物を身近に見られたり、雪が身近にあったり。ここだからこそというものがあると思います。

大変なのは他のママもそうだと思うけれど子どもの発熱や行事で休むことがあると、当然仕事に穴があくので、周りの協力なしにはやっていけないことです。そんなときも「帰っていいよ」「大丈夫だよ」って言ってもらえるのが本当にありがたいと思っています。うちの会社、職場結婚は多いんですが、結婚すると奥さんがやめちゃうパターンが多いので、ママになっても働きやすくなっていくといいなと思います。

結婚、出産しても働きやすい観光エリアへ

Qこの地域が「もっとこうなればいいな」と思うことはありますか?

数納:北山エリアで保育園から小学校、そして中学に上がっていくのを見るとずっと同じ人々と狭い世界で暮らしているなと思うことがあります。もっといろんな子と関われる環境があると楽しいだろうなと思いました。

あとは土曜日や日曜日の子どもの預け先がない上に、繁忙期の夏は7日しかお休みがもらえない。そういうのが解消できる環境が作れたらもっと働きやすくなるなと思っています。

村上:子育て世代が少なくて、通学のバスがあっても一人で帰ってくるときなどは心細いので、ここに住みたいと思う若い人が増えてくれたらいいなと思います。

横田:「土曜、祝前日のお泊まり保育」が必要だと思います!これだけ観光業が盛んならあってもいい。宿泊業にせよレストランにせよ、夜、夕食時間が勝負になることが多いんです。長野県内でも長野市や軽井沢町、松本市にはあるので、このエリアにも、せめて一箇所、平日まで365日24時間というわけはないので、あるといいと思います。

井上:子どもが3人いるんですが、年齢によって課題が出てきます。上の子たちの送迎が必要なとき一番小さい子はどうしようとか、何年生になったら一人でお留守番させていいのか。子どもの年齢に応じた手助けがあったらいいなと思っています。

とにかく預け先がないとなると、ますます働けなくなってしまいます。子どもを産んだ責任ということで仕事を諦めたくないんです。

家族、同僚、上司  手を差し伸べてくれる人は必ずいる

須能:ママが働くにあたって大変だと思っていることを共有できて、近しいものを感じて楽しい時間を過ごせました。みんな手探りだけれど明るい未来を目指したいと思いました。

井上:うちの長男はなかなかやんちゃぶりで、みんなに本当に迷惑をかけてきました。でも一番下の子が生まれてからは、同業の夫に代わってお風呂の面倒を見てくれたりオムツを変えてくれたり全部やってくれるようになって、今では家の中のキーマンです。

子どもはちゃんと親を見ているんだと実感して、この子に恥じないように働く背中を見せたいなと思うようになりました。産後復帰することに少なからずマイナスな気持ちがありましたが、マイナスではなくプラスにしていきたいと思います。

渡辺:子育てしながらがんばって働いているって話から、井上さんちの上のお子さんの話を聞いて感極まってしまいました。私も日々子どもに対して目が向けられてないって自分を責めたり、他のママと比べたりしてしまいます。でも子どもは見てくれているんだっていうのを感じさせてもらいました。

涼子:近所の関わりはもちろん、他の地域とかと交流がなかったので、今日皆さんの話を聞いてみんなすごいなと思いました。うちは子どもは一人で、それでもいっぱいいっぱいなのに。これからも頑張りすぎないようにがんばりたいと思います。

健:自分の家のことしか知らずに子育てと仕事をしていたので、大変なことがあるんだと知ることができました。家庭はもちろん、職場には他にも子育て中の方がいるのでそうした方のフォローもしていきたいです。

田子:東京とかと違うよさもあるけど、近いからの苦しさみたいなのも感じていたので、他にもそう感じている人もいるのかもしれないと思うことができてよかったです。素敵な方がたくさんいるんだなって思いました。

【まとめ】

男女共同参画、ジェンダーレス、そう叫ばれて久しいものの、観光業で働く女性の悩みはまだまだ課題山積だと知った2日間でした。しかしそれでも彼女たちが観光業で働き続けられるのは、仕事への誇りと家族への愛情、そして蓼科・白樺湖・女神湖を訪れてくれるお客様への想いの強さなのです。女性の活躍なしに成り立たないのは今後の観光業も例外ではありません。女性がより働きやすく、子どもたちにもイキイキと働く姿を見せられる観光エリアを目指しましょう。